日本海側や東北地方のような豪雪地帯では、「太陽光発電を導入しても雪の影響で十分な発電量が得られないのでは」と不安に感じる方も多いかもしれません。
しかし、結論を先に言えば、雪が多い地域でも太陽光発電は設置可能です。
ただし、導入にあたっては注意すべきポイントや適切な対策が必要です。本記事では、その詳細を解説します。
雪の多い地域でも太陽光発電は設置可能
豪雪地帯でも太陽光発電を導入できる理由について、いくつかの根拠をご紹介します。
1. 太陽光パネルの雪は自然に滑り落ちる
雪が積もる地域で太陽光パネルを設置する際、パネルの角度が重要になります。傾斜をつけることで、雪が自然に滑り落ちやすくなり、パネルへの過剰な負荷を防げます。
具体的には、傾斜角度を15度以上に設定することで、雪が効率よく落ちるだけでなく、パネルの破損や事故のリスクを軽減できます。
2. 雪に強い設計のパネルを選べる
太陽光パネルにはさまざまなタイプがあり、積雪に耐えられる仕様のものも販売されています。これらは、雪の重さに耐えるように設計されており、雪国での使用に適しています。
もし、豪雪地帯での設置を考えている場合は、積雪対応型のパネルを選ぶことで、より安心して利用できるでしょう。
3. 冬でも一定の発電量が期待できる
雪が多い季節でも、比較的短期間であれば通常の半分程度の発電量を維持できるというデータがあります。
ただし、積雪が長期にわたると発電が難しくなる可能性があるため、状況に応じて対策を検討する必要があります。
雪が多い地域で太陽光発電を導入するメリット
積雪地域における太陽光発電の導入には、いくつかの利点があります。
1. 高い発電効率と夏場のロス軽減
積雪地域では夏の気温が比較的抑えられるため、太陽光発電の効率が良く、夏場の発電ロスが少ない点が特徴です。
太陽光パネルは日射時間が長いほど発電量が増えますが、熱には弱いという性質があります。発電効率が最も高いとされる気温は約25℃で、それを超えると効率が低下します。一般的に、気温が1℃上がるごとに発電効率は約0.4%下がると言われています。
そのため、夏でも気温が上がりにくい積雪地域では、発電ロスを抑えながら安定したパフォーマンスを発揮できます。
2. 台風の影響が少なく設備が損傷しにくい
積雪地域は台風の被害が比較的少ないため、暴風雨による太陽光パネルの損傷リスクが低い傾向があります。
台風の強風や飛来物によってパネルが割れたりヒビが入ると、発電効率が著しく落ちてしまいますが、積雪地域ではそのようなリスクが抑えられるのも大きなメリットです。
3. 年間発電量の安定性
冬季は雪の影響で発電量が低下することもありますが、年間を通してみると暑い地域と比べて高い発電量を記録する場合があります。
気温が上がりにくい特性のおかげで、夏場の発電効率低下が少なく、トータルで見ると十分な発電量を確保できるのです。
雪が多い地域で太陽光発電を導入する際のデメリット
積雪地域での太陽光発電には多くのメリットがありますが、いくつかのデメリットや注意点もあるため、導入時には慎重に検討する必要があります。
1. 雪が長期間積もると発電量が減少する
太陽光パネルに雪が積もった状態では、発電効率が大幅に低下します。特に積雪が続く場合、晴天でも十分な発電が期待できないことがあります。
こうした問題を避けるため、パネルの設置角度を15度以上に設定し、雪が自然に滑り落ちやすい状態を作ることが重要です。
2. パネルの破損や変形のリスク
太陽光パネルは表面がガラスでできており、大量の積雪の重さに耐えきれない場合、破損や変形が起こることがあります。このような損傷は発電効率の低下を招くため、積雪耐性があるパネルの選定や設置方法に工夫が必要です。
3. 落雪による事故の危険性
パネルに積もった雪が落下することで、通行人や建物に被害を与える可能性があります。特に人通りが多い場所や建物の周囲では、落雪防止のための対策を講じることが求められます。専用の落雪防止装置を設置することで、こうしたリスクを軽減できます。
積雪地域で太陽光発電を設置する際のポイント
積雪地域特有の課題に対応するためには、適切な対策が必要です。以下では、そのための注意点を詳しくご紹介します。
① 雪かきや除雪作業は避け、自然に任せる
太陽光パネルに雪が積もると、つい雪かきしたくなるものです。しかし、雪かきや除雪は転落やパネルの損傷といったリスクを伴います。そのため、基本的には自然に雪が溶けるのを待つのが安全です。また、専門業者に依頼するか、融雪機能を備えた太陽光パネルの導入を検討するのも良い選択です。
② 積雪対応のパネルを選ぶ
積雪地域では、耐久性や融雪機能のあるパネルを使用することで、パネルの損傷や事故を防ぐことができます。たとえば、「カナディアンソーラー」のようなメーカーが提供するパネルは、5,400Paの荷重にも耐えられる設計となっており、約2.5mの積雪にも対応可能です。積雪量や気候に適したパネルを選ぶことが重要です。
③ パネルの設置角度を最適化する
野立て設置の場合、パネルの角度を自由に調整できます。傾斜を15度以上に設定することで、雪が自然に滑り落ちやすくなり、長期間の積雪を防ぐことができます。設置環境に応じた角度設定が効果的です。
④ 経験豊富な業者に依頼する
積雪地域での太陽光発電の設置には専門知識が求められます。施工実績が豊富で、地域の特性に詳しい業者を選ぶことで、安心して工事を進めることができます。信頼できる業者選びは成功の鍵となります。
雪国に太陽光発電を導入する際のよくあるQA
Q1. 雪国で太陽光パネルを設置する際、最も重要な点は何ですか?
A: 設置地域の積雪量に適した太陽光パネルや架台を選ぶことが重要です。行政が発表している「垂直積雪量」のデータを基に、耐積雪仕様の商品を選定することで、雪の重みによる破損を防げます。
Q2. 雪が積もると発電量はどうなりますか?
A: 雪がパネルを覆うと発電量が大幅に低下し、場合によっては全く発電しないこともあります。これを防ぐために、雪が滑りやすい傾斜設計や雪止めを外す工夫が有効です。
Q3. 雪国の冬場の発電量はどのくらいになりますか?
A: 一般的に、積雪の多い12月から2月の発電量は年間発電量の5~10%程度です。特に大雪が続く年は、発電量が極端に低下する場合があります。
Q4. 太陽光パネルの「落雪問題」とは何ですか?
A: 太陽光パネルは滑りやすい表面のため、雪が通常の屋根よりも早く落ちやすい傾向があります。これにより周囲への落雪の危険性が増しますが、雪が早く落ちることでパネルが太陽光を受ける時間が増え、発電には有利に働きます。
Q5. 落雪問題に対する対策はありますか?
A:
- パネル配置を屋根上部のみに制限することで、軒先手前の雪止めが機能を発揮できるようにする。
- 軒先に雪止め金具を設置することで、落雪を防ぐ。ただし、これによりパネル上に雪が留まりやすくなる可能性もあります。
Q6. 冬場の太陽光発電のメリットは何ですか?
A: 雪が降らない日や雪が溶けた後は、太陽光を十分に受けて発電が可能です。また、冬場でも積雪が少ない地域では安定した発電が期待できます。
Q7. 融雪設備付きの太陽光パネルは効果的ですか?
A: 融雪設備は、積雪地域での発電効率を向上させる一方で、設備導入や運用に追加コストがかかるため、メリット・デメリットを検討する必要があります。
Q8. 太陽光発電のシミュレーションは必要ですか?
A: 非常に重要です。特に積雪量や年間発電量を考慮したシミュレーションを行うことで、設置後の発電効率や経済的なメリットを正確に把握できます。
Q9. 太陽光発電の設置場所として適した条件は何ですか?
A: 雪が周囲に落ちても問題ない広い敷地や、日射量が多い方向に面した屋根が理想的です。また、積雪を考慮した設計が可能な場所が適しています。
Q10. 異常気象による積雪に対する注意点は?
A: 想定以上の大雪が降る場合、設置した雪止め金具が破損したり機能しなくなる可能性があります。そのため、過去の積雪データを基に、耐久性の高い設計を採用することが大切です。
Q11. 雪国で太陽光発電を設置する際の基本チェックリストは?
- 地域の積雪量に基づいた耐積雪仕様の商品を選ぶ。
- 落雪問題に対処できる設計を行う。
- 発電量シミュレーションを確認し、経済的メリットを把握する。
- 設置場所の条件や環境を慎重に検討する。
これらを確認することで、雪国でも安心して太陽光発電を導入できます。
まとめ
発電量は日射時間に大きく影響されますが、雪が多い地域でも年間を通した日射量を比較すると、それほど大きな差はありません。そのため、積雪の多い地域でも太陽光発電の導入は十分に可能です。 ただし、雪が多い環境では特有の注意点があるため、雪国での施工経験が豊富な業者に依頼することが重要です。
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