太陽光発電の導入を考える際に、設置場所や屋根の向きを気にしている方も多いのではないでしょうか。結論から言うと、太陽光パネルを北向きに設置するのは避けた方が良い場合が多いです。北向きの屋根は、日光が十分に当たりにくく、発電効率が落ちる傾向にあります。
また、屋根の形状も重要なポイントです。今回は、なぜ北向きの設置が不利とされるのか、そしてどのような屋根が太陽光発電に向いているのかについて詳しく解説します。
北向きの屋根とは?
屋根の向きや種類について、普段意識することはあまりないかもしれませんが、実はいくつかの代表的な形があります。
たとえば、左右対称の形状で本を開いて逆さにしたような「切妻屋根」。
屋根の中央にある棟から四方へ傾斜が伸びる「寄棟屋根」。
そして、片方だけに傾斜がついている「片流れ屋根」などが一般的です。
近年では、次の理由から「片流れ屋根」が人気を集めています。
- シンプルでスタイリッシュなデザイン
- 雨樋を一方向だけに設置でき、コストを抑えられる
- 屋根裏スペースを有効活用しやすい
しかし、この「片流れ屋根」は北向きになっていることが多く、太陽光発電には不向きです。
その理由として、住居のベランダを南向きに配置する設計が一般的なため、片流れ屋根は自然と北向きになることが多いからです。他の屋根形状の場合、複数の方向に傾斜があるため、北向きの面があったとしても他の方向で発電効率を補えます。一方、「片流れ屋根」は傾斜が1方向しかないため、北向きだと発電効率が著しく低下してしまうのです。
北側に設置した太陽光発電の発電量はどうなる?
太陽光発電は太陽光を活用する仕組みのため、日射量が多ければ多いほど発電量が増える特徴があります。そのため、パネルの向きや角度が発電効率を左右する重要なポイントとなります。特に、日当たりが悪い北向きに設置した場合、発電量は大幅に減少することが知られています。南向きを基準にすると、北向きでは発電量が65~66%程度にとどまるとされています。
もちろん、屋根の形状や周囲の環境によって若干の差はありますが、計算上では南向きと比べて約3分の2しか発電しないことになります。その結果、設置費用の回収には通常よりも長い時間がかかり、南向きであれば10年で回収できるところが、北向きでは15年ほど必要になることも。こうした理由から、業者によっては北側設置を推奨しない場合があります。また、太陽光発電メーカーの中には、北向き設置を禁止しているところや、保証の対象外とするケースも多くあります。
特に、片流れ屋根のように傾斜が一方向だけの場合は、北向き設置では十分なメリットが得られず、導入そのものが難しい場合もあります。
発電量に影響を与えるさまざまな要因
太陽光発電の効率はパネルの向きだけでなく、気温や日照時間などにも影響されます。一般的な太陽光パネルの素材であるシリコンは、高温になると性能が低下する性質があるため、真夏のような暑い季節では発電効率が下がる傾向にあります。
カタログに記載されている発電性能は、パネルの温度が25℃の状態で計測されたものです。しかし、気温が1℃上がるごとに発電効率が0.4~0.5%低下し、気温が10℃上昇すると発電効率は4%程度低下します。実際のパネル表面温度は気温より30~40℃高くなるため、夏場にはパネル温度が70℃近くに達し、発電効率が10~20%低下することもあります。
さらに、日照時間も発電量を左右する大きな要素です。太陽の動きにより、地域ごとに日照時間は異なります。一般的には、太平洋側の地域の方が日本海側よりも日照時間が長く、発電量が多い傾向があります。
また、パネルの設置角度も発電効率に大きく影響します。理想的な角度とされる30°を基準にすると、水平(0°)では効率が89.3%に、垂直(90°)では67.1%に低下します。つまり、角度が適切でないと発電効率を大きく損なう可能性があるのです。
北側設置時の注意点
北向き設置が発電効率に不利であるとはいえ、実際の発電量はさまざまな要因によって決まります。真北ではなく北西や北東向きの場合や、北側以外の方向に向いた屋根もある場合は、南向きの80%程度の発電量が確保できることもあります。そのため、まずは信頼できる業者に相談し、設置場所での発電量シミュレーションを実施してみることが大切です。
業者から見積もりとシミュレーション結果が提示されたら、以下の計算式を使って初期費用の回収期間を確認しましょう。
- 現金で導入する場合: 初期費用 ÷ 年間発電金額 ≦ 10
- ローンを利用する場合: (初期費用 + 総金利負担額) ÷ 年間発電金額 ≦ 10
この計算で、10年以内に初期費用を回収できると判断できれば、それ以降の発電分はすべて利益として考えられます。ただし、10年以上かかる場合は費用対効果が低くなるため、慎重に検討した方がよいでしょう。また、設置後10~15年経過すると、パワーコンディショナの交換費用などのメンテナンス費用が発生する点にも注意が必要です。
近隣トラブルに注意
北向きの屋根でも日射量を確保できたとしても、パネルからの反射光が近隣トラブルを引き起こすことがあります。反射光が眩しいだけでなく、室温を上昇させることもあり、過去にはこれが原因で裁判沙汰になった例も報告されています。
とはいえ、一般家庭の屋根に設置する場合、トラブルに発展する可能性は低いとされています。しかし、特に夏場は反射光が深刻な問題を引き起こす場合もあるため、設置計画の段階で光の反射方向について事前に確認しておくと安心です。
太陽光発電に適さない建物や条件
これまで北向き片流れ屋根が太陽光発電に不向きである理由について触れてきましたが、実際にはそれ以外にも太陽光発電の導入に向いていない建物や条件が存在します。以下のようなケースは注意が必要です。
日照時間が短い地域
日照時間が少ないと、十分な発電量が得られず、家庭の電力を賄えない場合があります。また、電気代を節約できたとしても、初期導入費用を回収できるまでの期間が長引くことがあります。
屋根の面積が小さい
ソーラーパネルを設置するスペースが限られると、十分な発電量を確保できない可能性があります。
建物が老朽化している
老朽化した建物では、屋根がソーラーパネルの重量に耐えられない場合があり、設置が難しくなることがあります。
周囲に高い建物や樹木がある
たとえ屋根が南向きでも、近隣の建物や木々によって日光が遮られると、発電効率が下がる可能性があります。また、将来的に高層建築物が建つ計画があるかどうかも確認しておくと安心です。
気温が高い地域
太陽光モジュールは気温が高いと発電効率が低下する特性があります。特に夏場は、通常よりも効率が悪くなるケースがあるため、注意が必要です。
北向き設置でも効果的なソーラーパネルとは?
北向きの屋根にソーラーパネルを設置する場合、日射量が少なくなるため、一般的なパネルでは十分な発電が期待できないことがあります。そのため、北向きの条件でも効率的に発電できる特性を持つパネルを選ぶことが重要です。例えば、CISやCIGSといった化合物系素材を使用したパネルは、弱い光でも発電効率を維持できるため、散乱光が主になる環境に適しています。
さらに、バイパスダイオードが搭載されたパネルを選ぶことで、日陰の影響を最小限に抑えることが可能です。この機能は影がかかった部分を避けて電力を次の回路にスムーズに流す仕組みを持ち、発電量の低下を防ぎます。また、一部のメーカーでは北向きや低日照条件に対応した特別仕様のパネルも販売されており、これらを検討するのも有効です。
設置を検討する際には、年間を通じた日射量のシミュレーションを実施し、パネルの配置や角度を最適化することが大切です。北向きの設置では、こうした工夫を重ねることで、限られた日射条件下でも効率的な発電が可能になります。
導入前には必ずシミュレーションを
これまで、北向きの屋根は太陽光発電に不利だと説明してきました。しかし、実際の発電量は屋根の向きだけでなく、さまざまな要因が影響します。そのため、屋根が完全な北向きでない場合、南向き設置の約80%の発電量を期待できるケースもあります。
ですから、単に「北向きだから無理」と決めつけるのではなく、専門業者に相談して発電量シミュレーションを行い、その結果を踏まえて導入を検討することをおすすめします。
太陽光発電の北側設置に注意!不向きな条件まとめ
太陽光発電は、北向きの屋根には基本的に適さないと言われています。これは間違いのない事実です。
さらに、太陽光発電に不向きとされる建物や条件として、以下のようなものが挙げられます。
- 日照時間が少ない地域
- 屋根面積が狭い
- 建物が老朽化している
- 周囲に高い建物や木々があり、影が多い
- 年間を通じて気温が高い地域(特に夏場)
ただし、北向きの屋根や上記の条件に当てはまる場合でも、すぐに諦める必要はありません。北向き設置であっても、南向きの約80%程度の発電量を得られるケースもあります。また、太陽光発電を導入することで、これまで以上に生活の質が向上する可能性が高いことは間違いありません。ぜひ一度、専門家に相談してみてください。
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